あんそら的「文学で旅する韓国-大邱編」③

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最後にご紹介するのは「金源一『마당깊은 집(庭の深い家)』」記念館。

 

~金源一『마당깊은 집(庭の深い家)』の舞台を歩く~

 
韓方の香りが漂う薬令市を抜けて、2019年3月に開館した「김원일의 마당깊은 집(金源一の庭の深い家)」へ。
『마당깊은 집(庭の深い家)』は、小説家の金源一が1988年に発表した自伝的長編小説で、1990年にはドラマ化された国民的作品でもあります。日本語翻訳は、1992年に出版された『韓国の現代文学2』(柏書房)に収録されているそうです。

 

 
ここでは、小説のストーリーや登場人物の紹介とともに、母親が実際に使っていたミシンなど、当時住んでいた部屋を再現した展示があります。「庭の深い家」というのがどんな家なのか想像がつかずにいたら、「門を入ると3~4段の階段があり、下りると庭になっている家」とのこと。お金持ちが住む昔の大きな家はこのような造りだったと、館内に展示されている家の模型を見ながら、解説士の先生が説明してくれました。

 

 
歩いてきた通りに主人公キルナムの像がありました。この周辺が小説の背景となった場所で、この路地の奥にある店「한옥국시」の位置とのことですが、実際はもっと大きな家で、隣接する民家などを含むほどの広さがあったそうです。本当はこの地に記念館を建てたかったとのことですが個人所有のためできなかったという話も聞きました。

 

 

路地に入ると壁に家の絵が描かれ、通り抜けたところに「小説『마당깊은 집』背景場所」の表示があります。その横には、金源一の肖像などが描かれています。
個人的にもここは「庭」のようなエリアで、キルナム像の前などは、もう何十回と歩いているはずなのです。像の存在も知ってはいましたし、これらの路地の隅々まで歩き回ったつもりでいました。そう、確かに歩き回ってはいるのですが、立ち止まることなく通り過ぎるだけだった場所やものがたくさんあったことに、この旅を通して気づかされました。
この後も、2.28民主運動記念館や世界遺産の道東書院などの見学、また、文旅ならではの出版社や書店訪問と、まだまだ新たな発見と学びの旅は続きました。
今回は「文学」をキーワードに旅の一部をご紹介しました。

『마당깊은 집』はクオンから『深い中庭のある家』として新訳が出版されるそう。その日を楽しみに待っています。