日本の本屋さんが読んだ、『韓国の「街の本屋」の生存探究』

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刊行に先立って『韓国の「街の本屋」の生存探究』ゲラ版を読んでくださった、日本各地の本屋さんからの感想をここでご紹介します。
店名の横にあるリンクからはお店のウェブサイト、SNS等へアクセスできます。ぜひ合わせてご覧ください。


Cat’s Meow Books 安村正也さん | twitter
――どうしてこの店を始めようと思ったのですか?
キャッツミャウブックスとしてインタビューを受けるとき、媒体に関わらず最初に必ず訊かれる質問です。当店がラーメン屋さんだったら、きっとこのようには尋ねられないでしょう。それは言外に、―なぜ誰もが儲からないと知っている本屋を?という意味が込められている気がします。本書は、本屋の店主になりたい人たちにとって、「なぜ街の本屋になりたいのか」「ウチはどんな店なのかを一行で」説明できることが大切と説いています。これは韓国や日本に限らず、それらに答えられることが、自分の本屋を長く続けられる最善の道であると、私も強く信じています。私は、会社員を続けながら、パラレルキャリアとして街の本屋になりました。それは、正に「自分はどんな人生を送るのかという選択をすること」でした。当店には、これから本屋になりたい人だけでなく、現在の仕事を続けながら、自分が何者なのかを語ることのできる別の仕事を始めたい人も相談に来ます。

本書で探究されているのは、街の本屋が生存しつづけるためのテクニカルな条件ではなく、どのようにアイデンティティを築いてきたかのアイデアの実例です。本屋になりたい人でなくても、未来において自分が求められていることや、社会における自分のポジションを具現化しようと模索している人にとって、指針になる本と言えるでしょう。

ON READING 黒田義隆さん | web
お隣、韓国も、本や本屋を取り巻く状況は日本ととても似ている。

決して儲からないというのに、この場所には本や本屋が必要だという切なる想いを抱き、それぞれの本屋がそれぞれのやり方で、本に未来を託している。
この多様な本屋の在り方こそが、これからの世界を象徴しているようで、その姿はとても頼もしい。

H.A.B 松井 祐輔さん | web
非常に優れた本屋論でありつつ、本書は最新のビジネスレポートでもある。

韓国での本屋開業ブーム。その担い手へのインタビューを中心にまとめた前半は、本屋を始める、あるいは続ける人々のリアルな姿を映し取っていて、日本でも多様な種類がある「本屋本」の一冊として、韓国の本屋の様子を伝えてくれる。
ただ本書はそこだけにとどまらない。本屋の歴史的背景、図書定価制(日本で言う再販制度)の変遷や、供給率(正味・卸値)。さらには納品(採用品など公的機関へのまとまった販売)の課題まで。業界事情がこれだけわかりやすくまとまったレポートは貴重だ。

韓国からの翻訳小説が近年多く刊行されていて、その流れの中で歴史や社会事情への関心も高まっていると感じている。そしてそうしたテーマの本も多く出ている。では、出版と本屋はどうなっているの? という疑問への最新で最良の解答が本書になるはずだ。

大きな意味で、日本でも、韓国でも本屋を取り巻く事情や課題は似通っているのだろう。ただ、それは当然「全く同じもの」ではない。人と人の交流はもちろんながら、歴史環境におけるその小さな差をしっかり理解することからしか、本当の交流は生まれないのではないかと思える。



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非常に優れた本屋論でありつつ、本書は最新のビジネスレポートでもある。

韓国での本屋開業ブーム。その担い手へのインタビューを中心にまとめた前半は、本屋を始める、あるいは続ける人々のリアルな姿を映し取っていて、日本でも多様な種類がある「本屋本」の一冊として、韓国の本屋の様子を伝えてくれる。
ただ本書はそこだけにとどまらない。本屋の歴史的背景、図書定価制(日本で言う再販制度)の変遷や、供給率(正味・卸値)。さらには納品(採用品など公的機関へのまとまった販売)の課題まで。業界事情がこれだけわかりやすくまとまったレポートは貴重だ。

韓国からの翻訳小説が近年多く刊行されていて、その流れの中で歴史や社会事情への関心も高まっていると感じている。そしてそうしたテーマの本も多く出ている。では、出版と本屋はどうなっているの? という疑問への最新で最良の解答が本書になるはずだ。

大きな意味で、日本でも、韓国でも本屋を取り巻く事情や課題は似通っているのだろう。ただ、それは当然「全く同じもの」ではない。人と人の交流はもちろんながら、歴史環境におけるその小さな差をしっかり理解することからしか、本当の交流は生まれないのではないかと思える。

さて、しかし楽しいはずの読書に誰しもがそこまでの問題意識を持つ必要もないだろう。本書のもう一つ特徴的な点は、「伴走者」がいることだ。長年出版業界を取材してきた書き手である石橋毅史さんが、なんと本文中にコメントを差し込むという形で参加している(脚注ではなく、本当に本文中にコメントが差し込まれるレイアウトだ)。内容は、業界用語や韓国に対する日本事情の補足といった日本の読者をサポートするものもあれば、「ただの個人的な感想」もある。それは、石橋さんならではの暖かさのあるコメントで、固すぎず邪魔にもならず、ちょっとした専門家と一緒に読書会をしている、と言うような雰囲気で、翻訳書であり、かつ本屋業界本という特殊な内容にもかかわらず、本書が読みやいのもその影響だろう。

とにもかくにも、『韓国の「街の本屋」の生存探求』は近年出版された中でも最良の「本屋本」の一つ。「楽しく」と「真面目に」を両立しながら読み進めてもらえる本だ。

SAZARE BOOKS 石川聡子さん | twitter
驚いたことに、昨今の個人運営による小規模型書店の隆盛もさることながら、供給率や利益率の議論など、多少の制度の違いはあれど韓国と日本の状況は似通っているところも多く、各書店による生き残りをかけた工夫やアイデアはなるほどと思いながら興味深く読ませてもらった。

本屋は決して楽な商売ではないし、「10年後も続くお店を目指します」と豪語することも難しい。けれど、やっぱり本屋はなくてはならない存在だと思っているし、お店を開けば開くほどその確信がより強くなっているのも事実である。

ときどきは本書を開いて、日本全国はもちろん、海の向こうにもそんな強い確信をもちながら、今日も灯りをともす同志のような存在がいることを思い出しながら、一冊一冊本を並べていきたい。



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昨年の9月に書店を開いた。SAZARE BOOKSという名前の「さざれ」という単語が示すとおり、小さな小さな本屋だ。

当店は誰でもひと棚店主になれる棚貸し制度や、店内の本を自由に読むことができる時間貸しの読書室を設けており、混迷の時代を生き抜く知の塊を街でシェアするイメージより、「わかちあう本屋」を名乗っている。

そのため、本書に出てくる
«本屋には、誰かとつながりたいと願う心が集まる。いわば心の故郷である。»
や、
«『人生はとても長い道だから、ぼくたちは互いに助け合わない』といけない»
という言葉は到底見逃せなかったし、他国のこととは思えないくらいいたく共感した。

驚いたことに、昨今の個人運営による小規模型書店の隆盛もさることながら、供給率や利益率の議論など、多少の制度の違いはあれど韓国と日本の状況は似通っているところも多く、各書店による生き残りをかけた工夫やアイデアはなるほどと思いながら興味深く読ませてもらった。

本屋は決して楽な商売ではないし、「10年後も続くお店を目指します」と豪語することも難しい。けれど、やっぱり本屋はなくてはならない存在だと思っているし、お店を開けば開くほどその確信がより強くなっているのも事実である。

ときどきは本書を開いて、日本全国はもちろん、海の向こうにもそんな強い確信をもちながら、今日も灯りをともす同志のような存在がいることを思い出しながら、一冊一冊本を並べていきたい。

最後に、本書にでてくる書店はどれも魅力的だが、特に気になったのが「春の日の本屋」だ。
«美しい海辺に佇む「春の日の本屋」は、一幅の絵画を思わせる本屋だ。»

TOUTEN BOOKSTORE 古賀詩穂子さん | web
韓国の「街の本屋」の話だけれど、本屋のつながり、たのしさ、可能性……ここまで近く感じられるものであることに驚きました。そしてチャレンジングな動きが多くて参考になると同時にエンパワメントされました。

本屋を営むことは、儲ける儲けないの話の前に続けていくこと自体がむずかしいことなのだと痛感していましたが、「自分だけじゃない」ということが何より心強く、そして重く感じられたことでした。



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すごく面白く読ませていただきました。
開業して1年半、個人的に今一番読みたかった本でした。

本屋を経営し店頭に立っていると、
「好きな本に囲まれていいね」とか、
「社会貢献だね」とか、
「儲けようと思ったらできないもんね」とか、いろいろと、声をかけてもらえます。
全部ほんとうのことだけれど、少し違う。
「そうですね」と言いながら、もやもやしていた気持ちがこの本を読むことで少しずつ解かれていきました。

韓国の「街の本屋」の話だけれど、本屋のつながり、たのしさ、可能性……ここまで近く感じられるものであることに驚きました。そしてチャレンジングな動きが多くて参考になると同時にエンパワメントされました。

本屋を営むことは、儲ける儲けないの話の前に続けていくこと自体がむずかしいことなのだと痛感していましたが、「自分だけじゃない」ということが何より心強く、そして重く感じられたことでした。

「街の本屋」として、当店としての生き方を、行動しながら探し続けていきます。

YATO 佐々木友紀さん | Instagram
このタイトルを見かけたとき、一も二もなく読もうと思いました。
ちょうどそのとき
1つの町に1つくらい本屋があって、
それがどうすれば続けていけるのかを
毎日考えていたところだったので。

またそのことは社会の問題とも関連しているように思っています。
本屋の運営やあり方について
細かなテクニックやヒントが無数に得られる本ですが、
それと同時に巨視的な部分での社会背景、社会問題のつながりと
書店の存在との関連についてもじっくり考えることが出来ました。
1回読んだだけでは消化できず、あと2周くらいしたいと思っております。
そのとき自分にさまざまな考えが浮かんでくるのが既に楽しみです。

あんず文庫 加賀谷 敦さん | twitter
著者の並々ならぬ博識と熱情が絡まりまとめられた、韓国の本屋事情や歴史と分析。
それはここ日本でのそれにも相似しているようにも思えてなりません。
本との出会いを広げてゆくこと、そして信じること。
しがない一本屋として、襟を正す一冊でした。
また、すべての本好きのかたへも読んで頂きたいともおもう一冊でした。
きっと、ごひいきの本屋を想い出すかたもいるのではないかという希望も……!
本書から伝播した本への信愛を味わいつつ──。



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「本を読まないということは、そのひとが孤独でないという証拠である。」「本を読まないということは、そのひとが孤独でないという証拠である。」
かつて太宰治が『如是我聞』にて語った言葉を近ごろ考えるようになっていました。
コロナ禍の変化と共に、弊店にお見えの皆さまの動きも変わってきたこと、そしてお客さまと「読書にすくわれたこと」を語り合ったからなのだと思います。
今よりよっぽど外に出られない状況が続いていた頃に孤独をおぼえ、本が一時でも癒したこと。
あるいは、生涯においてどうしようもなくやりきれない日々を過ごす中、本が足下を照らしてくれたこと。
ありがたいことに、本を介在した場を開いていると、そのようなお話しをお客さま方と交わす機会に恵まれるのです。
そして最近また、ご近所さまと。
ここで、冒頭の太宰による言葉。
まさに本書のゲラを読み切った直後に浮かんだ言葉でした。ああ、そうだよねえという納得とともに、「未知なる読者」のことも行間に含まれるのでないかという問いが湧出してきたのです。(太宰ファンとしてこの注釈を入れるのは緊張しますが……)
もし仮にしんどい状況にあって、わずかでも和らげてくれる本にそもそも出会うことがなければ──?
その一冊にただ出会えていないだけで、出会いページをめくっていくことで孤独を想起し、癒されることもありうるのでないか。
本たちと「未知なる読者」とが会う機会が増えてゆくことで、日々の営み、ひいては人生がちょっとでも前におしだされるのではないか。と。
著者の並々ならぬ博識と熱情が絡まりまとめられた、韓国の本屋事情や歴史と分析。
それはここ日本でのそれにも相似しているようにも思えてなりません。
本との出会いを広げてゆくこと、そして信じること。
しがない一本屋として、襟を正す一冊でした。
また、すべての本好きのかたへも読んで頂きたいともおもう一冊でした。
きっと、ごひいきの本屋を想い出すかたもいるのではないかという希望も……!
本書から伝播した本への信愛を味わいつつ──。

韋編三絶 松浦信孝さん | Instagram
出版と書店を巡る問題は日本だけではなく、韓国にも共通してあるというのが新鮮で、読む前は韓国の地名や書店名を見ても分からないだろうなと思っていましたが、本書で扱われる普遍的な問題が大変為になり、個人書店としても今後自分の書店をどのような空間にしていくのか、何を優先させるのかなど、自分の問題として読みながら一緒に考えてしまいました。

また、出版界だけの問題ではなく、ひいては世の中的な価値観、経済の本質として安さと便利さだけでなく、未来へと残す価値への投票としての消費のあり方を問い直す一冊にもなっており、現代社会への一石を投じる本だと感じました。

書店はある種の文化防衛線であり、大型書店、オンライン書店、小規模書店などのそれぞれの役割を再考する絶好の機会になりました。



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出版と書店を巡る問題は日本だけではなく、韓国にも共通してあるというのが新鮮で、読む前は韓国の地名や書店名を見ても分からないだろうなと思っていましたが、本書で扱われる普遍的な問題が大変為になり、個人書店としても今後自分の書店をどのような空間にしていくのか、何を優先させるのかなど、自分の問題として読みながら一緒に考えてしまいました。

また、出版界だけの問題ではなく、ひいては世の中的な価値観、経済の本質として安さと便利さだけでなく、未来へと残す価値への投票としての消費のあり方を問い直す一冊にもなっており、現代社会への一石を投じる本だと感じました。

書店はある種の文化防衛線であり、大型書店、オンライン書店、小規模書店などのそれぞれの役割を再考する絶好の機会になりました。

また、書店という空間を考えることが、今後地域でのコミュニティスペースへと発展していくような、経済活動を行う場所としての側面から、知的創造を活性化する共有地としての側面へと緩やかに役割を変化させていく流れも感じ、様々な分野に関して大変濃い思考を巡らせていただいた本になりました。

くじらブックス 渡慶次美帆さん | twitter
「韓国の「街の本屋」の生存探究」は、本屋(独立・中小・大型限らず)を営む人、始めたいと思う人に、ぜひ読んでほしい一冊だった。
韓国の本屋・出版状況について書いた本なのに、独立書店ブームの盛衰・本の価格制度問題など、日本と重なる部分がとても多いからだ。
特に第4章「本屋で食べていけるのか?」以降は、本屋経営の<理想>と<現実>、各店の試行錯誤を長期に渡り取材しまとめていて、今現在経営に悩んでいる人の参考になるだろう。
韓国独自の制度・歴史も、案内人・石橋毅史さんによる解説でわかりやすくつまづかずに読み進められるし、その上で、日本の出版制度・本屋経営の問題点も浮き彫りになってくる。
実態を調査研究し問題点を捉え、本と本屋の未来を具体化しようとする著者の努力と思いに強く感銘を受けたし、日本も独立書店ブームの先、継続させていくための冷静な視座が必要だと思う。
海の向こうで今日も本屋が営まれていることを想像しながら、自分も頑張ろうと改めて腹を据えた読書体験だった。

啓文社西条店 三島政幸さん | web
韓国と日本の独立系書店(これは日本の表現ですが)が置かれている状況が、ほぼ同じということに大変興味を持ちました。日本の書店の影響も受けながら、ほぼ同じ時期に同じような動きを見せる親和性も感じました。流行の一方で経営が厳しく、閉店する本屋も多いという現実もあり、これも日本と同じ状況ですね。

定価販売をめぐる制度などでの違いはあるものの、韓国の書店・本屋事情には日本の書店として学ぶ点も多いと感じました。文化面を支える産業として、いい部分はどんどん取り入れていきたいですね。

旅する本屋ruco-bon*大石香さん|Instagram
この業界が抱えている問題というか、闇のようなものは[韓国と日本で]どこか似ているどころか、全く同じなのではないかと思います。

慣習から抜け出せない、抜け出したくないことが自分たちで自分たちの首を絞めていることは分かっていても、大きなものには立ち向かえない……それを街の本屋からひっくり返していこうという動きはもっと大きくなるべきだし、国を超えて一緒に立ち向かうこともできるのではないか?と希望も持てました。

それぞれの立場が対立することなく、共存できるようにして、私たちの後から本屋になる方たちに引き継いでいきたいです。

そのために必ず生き残らねば!



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小さな本屋が生存していくために日頃から試行錯誤しています。
どうやって生き残っていくか?という問題を別の国の事例を知って考えることは視点が強制的にガラッと変えられてとても刺激的でした。

韓国の街の本屋さんの取り組みや、店主の人柄までが伝わってきて、韓国で書店巡りをしてみたくて仕方なくなりました。

地図アプリで検索し、お店の雰囲気を感じながら読む時間はとても楽しかったです。

私は移動式の本屋をしていて、イベント出店した際お客さまからの冷やかしにいつもブレそうになっていたのですが
「自分が行きたい本屋をつくる」
「街の本屋を蔵書量で評価するのは、もはや無意味だ」
「このマーケットは、商売じゃなくてたまり場なんだ。」
といった言葉にホッとし、これでいいんだと肩の力を抜くことができました。

しかし、この業界が抱えている問題というか、闇のようなものはどこか似ているどころか、全く同じなのではないかと思います。

慣習から抜け出せない、抜け出したくないことが自分たちで自分たちの首を絞めていることは分かっていても、大きなものには立ち向かえない……それを街の本屋からひっくり返していこうという動きはもっと大きくなるべきだし、国を超えて一緒に立ち向かうこともできるのではないか?と希望も持てました。

それぞれの立場が対立することなく、共存できるようにして、私たちの後から本屋になる方たちに引き継いでいきたいです。

そのために必ず生き残らねば!

また、非読者を読者にするという課題に対して
読書会がこんな風に影響してくるのか!と驚きました。

読書会は、本が好きな人たちだけが集まってワイワイするものというイメージがあったのですが
非読者を読者にするための読書会に挑戦してみたいと思います。

読書サロンことのは文庫 佐川好浩さん
国や制度が違っても「街の本屋」が置かれている状況に違いはないらしい。おそらく本を読むだけの立場であれば、様々な仕掛けが多様化されて愉しむ機会が増えている。「街の本屋」もゲームチェンジャーとして変わる術を求められている。果たして「街の本屋」に正解に正解はあるのだろうか。地域の特性を活かした「街の本屋」、「街の本屋」の共同体にヒントがあるように思えた。

ニカラ 中田幸乃さん | Instagram
他の書店と比べて落ち込むよりも、
店の状況を受け入れて、この場所でできることを考え続けるしかないですよね。
そうやって店を続けてきた人たちがいることを、
確かに感じることができたのは、
単なる本屋紹介ではなくて、
本屋の店主の方々と、著者のハン・ミファさんの哲学が書かれているからなのだと思います。
石橋さんのコメントが入るというスタイルもおもしろくて、
よい参考書に出会えたような気持ちです。
ありがたいです。

島田さんのあとがきには胸がいっぱいになり、
ああ、なんて良い文章なんだろう…と感動しています。
「わたしたちはだれかの力になりたい。社会のなかでよい役割を果たしたい」という言葉。
自分なんてまだまだ…とすぐに思ってしまうけれど、
理想があって本屋を始めたことをちゃんと認めて、
続けられる方法で、本屋を続けていきたいと思いました。



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ニカラは山間部の小さな集落にあって、
多くの人にとって、ふらりと立ち寄ることのできる場所ではありません。
それでも、普通の本屋でいたいと思っています。
離島にあることや、山奥にあることが魅力になるわけではなくて、
本屋としておもしろい場所でありたいというのが目標です。
ただ、そう思ってはいるものの、売上は多くなく、
仕入れも迷ってばかりで、よく他の書店のSNS投稿を見て落ち込んでいます。

この本には、励まされるような言葉がいくつもあって、
鉛筆で線を引きすぎて特に大事なところがどこなのか全然わからなくなってしまいました。笑
本文中の「どこにもないオリジナルになること。同時に、本屋の本質を失わないこと」
という箇所は額に入れて飾っておきたいような言葉でした。

「ワンドサロン」の話は自分の置かれている立場に近くて、
ニカラの状況を言語化してもらっているようで嬉しくなりました。
店を始めたことで、趣味の話をしたくてもできないと思っていた人が、
佐渡のあちこちにいたことを初めて知りました。
パートナーは5年ドーナツ屋を続けても出会えなかった人たちに会えた、と言っていて、
ここが本を置いている場所だからこそ、
趣味の話をできる、社交場のようになれたのかもしれないと感じています。
綺麗事ではなく、現実で起こっていることとして、
本屋が人と人の交流の場になりうることに納得できました。

他の書店と比べて落ち込むよりも、
店の状況を受け入れて、この場所でできることを考え続けるしかないですよね。
そうやって店を続けてきた人たちがいることを、
確かに感じることができたのは、
単なる本屋紹介ではなくて、
本屋の店主の方々と、著者のハン・ミファさんの哲学が書かれているからなのだと思います。
石橋さんのコメントが入るというスタイルもおもしろくて、
よい参考書に出会えたような気持ちです。
ありがたいです。

島田さんのあとがきには胸がいっぱいになり、
ああ、なんて良い文章なんだろう…と感動しています。
「わたしたちはだれかの力になりたい。社会のなかでよい役割を果たしたい」という言葉。
自分なんてまだまだ…とすぐに思ってしまうけれど、
理想があって本屋を始めたことをちゃんと認めて、
続けられる方法で、本屋を続けていきたいと思いました。

そして島田さんが最後に書いているように、
わたしも、この本を読んで今までで一番韓国に行きたくなりました!
本屋さんを訪ねてみたいです。

百年の二度寝 河合 南さん | web
夢想を抱かなければ、本屋は誕生しない。現実と向き合わなくては、本屋は継続しない。現実と夢想の間を漂う本屋たちを高所から断じるのではなく、足並みを揃えて一緒に歩んでくれる一冊でした。日本と韓国の現状は非常に似通っていますが、異なっている面も多い。石橋毅史さんが共通点と相違点を丁寧に案内してくださるため、日本の書店事情についても学ぶことができる本になったと思います。



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・夢想を抱かなければ、本屋は誕生しない。現実と向き合わなくては、本屋は継続しない。現実と夢想の間を漂う本屋たちを高所から断じるのではなく、足並みを揃えて一緒に歩んでくれる一冊でした。日本と韓国の現状は非常に似通っていますが、異なっている面も多い。石橋毅史さんが共通点と相違点を丁寧に案内してくださるため、日本の書店事情についても学ぶことができる本になったと思います。

・「多様性」はここでもやはり大切な要素。様々な書店があって、様々なお客様の居場所になるという面もあるが、「本」そのものの多様性、言論の多様性を担保するのも、本屋の責務だと思う。
「いい本」「いい書店」と、ある価値観で断じることができる本や書店だけが残る状況は目指したくない。

・本屋好き層へ的を絞った品揃えをすることに若干躊躇しているのですが、そういった方々が楽しめる場所を作るのは立派なことだし、店の足元を固めるためにも必要な戦略なのだと、思い直しました。ただ、いざ、「どんな本なら本屋好きさんにリーチするか」と考えると、それはそれでわからないです……

・本文中に「直接取引」を否定するような部分があったが、韓国の事情はわからないものの、日本の書店、とくに大取次と取引のない当店のような「独立系」にとっては、直接取引はなくてはならないもの。ただ、今年に入って直接取引に意欲的な出版社さんで条件の改定が相次いでおり、特に小規模な出版社さんにとっては負担が大きいのだろうと感じます。

・書籍の値引きが可能な韓国においては、大手書店が価格競争に走ることで「値下げ」圧力が生じ、特に体力の乏しい個人書店は苦境に立たされているとのこと。諸々批判されがちな日本の「再販制度」も書店の業態の多様性、書籍の多様性を保つうえで必要な制度だと改めて思いました。

・「キュレーションしたわずかな本を狭い店内で売るスタイルでは家族を養うほどの収益をとれない」完全におっしゃる通りでぐうの音も出ないです。

・コミュニティ作りは確かに書店を軌道に乗せる上で大切ですが、コロナ禍という現実と真剣に向き合おうとすればするほど、そのための手段がどんどんとれなくなっていく日々です。ネットを有効に使う必要もあると思うのですが、料金に見合った配信を目指すとかなりの投資を要求されます。そのあたりを乗り越えて積極的にイベント(配信イベント)を行うことの出来る本屋さんたちが眩しい。(やらない理由探しみたいで情け無いですが……)

・石橋さんの「本屋は、客に幻想を与えることで成り立っているところがある」というのは、本当にその通りです。福嶋聡さんが本屋は劇場で書店員は役者と書かれていたことがあって、書店員というのは等身大の自分の姿をお客様に見せてるだけでは務まらない部分のある仕事だと思っています。
「ここにある本は良い本だ」「この人のレファレンスは正確だ」と思っていただくには、ある程度のハッタリや芝居っ気も求められる。そういう部分をわりと楽しめてしまう性格なので、確かに私には詐欺師も素養があるのかもしれないです。

本の轍 越智政尚さん | webInstagram
「あれ?これってどこの国の本屋の話だったっけ?」
仕事を終えた後、なんの気構えもせず、ではでは…と本を開いて読み進めていくうちに引き込まれ、自分の中でうっかり身近な話と勘違いするぐらい、お隣の国、韓国と日本の本屋を取り巻く状況は似通っている点が多いことに驚き、共感を覚えたのであった。

僕は韓国に行ったことも無ければ、韓国文学でさえ積極的に読むこともなく過ごしてきたけれど、それでもソウルを中心に若い世代が牽引してブックコミュニティ(本屋)が増え、本を通じた活動がじわじわ広がりを見せていることは知っていた。
本書はムーブメントの表面をなぞるのではなく、本屋の誕生から歴史に始まり、仕入に関する問題や続けていくための工夫、未来に向けてどう行動していくのか?といったところまでを俯瞰的かつ詳細に記すことで、ブックストアガイドのような類の本とは一線を画すものとなっている。

日本と同じで問題は山積みだ。
隣の芝は青くなかった——。
ただし、希望はある。



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「あれ?これってどこの国の本屋の話だったっけ?」
仕事を終えた後、なんの気構えもせず、ではでは…と本を開いて読み進めていくうちに引き込まれ、自分の中でうっかり身近な話と勘違いするぐらい、お隣の国、韓国と日本の本屋を取り巻く状況は似通っている点が多いことに驚き、共感を覚えたのであった。

僕は韓国に行ったことも無ければ、韓国文学でさえ積極的に読むこともなく過ごしてきたけれど、それでもソウルを中心に若い世代が牽引してブックコミュニティ(本屋)が増え、本を通じた活動がじわじわ広がりを見せていることは知っていた。

本書はムーブメントの表面をなぞるのではなく、本屋の誕生から歴史に始まり、仕入に関する問題や続けていくための工夫、未来に向けてどう行動していくのか?といったところまでを俯瞰的かつ詳細に記すことで、ブックストアガイドのような類の本とは一線を画すものとなっている。

日本と同じで問題は山積みだ。
隣の芝は青くなかった——。
ただし、希望はある。

文中にも触れられていたが、2017年の春にニューヨークを訪れた際、ロウアー・マンハッタンにある本屋「McNally Jackson」の入り口に「Buy Local First !」という言葉が掲示されていたのを思い出した。
アメリカに倣い、地域住民と一緒に本屋を拠点としたコミュニティを育て、生態系を確立させながら街の文化を紡いでいくことで活路を見出せそうだ。
それは韓国も日本も変わらない。

自分も”本は、「商品」でありながら「文化財」でもある” という言葉を胸に留め置いて、これからの本屋の在り方を考えていきたい。

本ゃ寺子屋 坂本真紀さん
手段は本じゃなくてもいいのだが、それぞれが自分の頭で考えて自分の足で生きていけるようになるためには。いろいろなメディアがある中で本にしか担えないものを突き詰めていきたい。ふわっとした、豊かさと潤いを与える手段としての本、という価値訴求で考えると、本はなかなか遠回りな手段のものになってしまうのではないか。本というメディアを残すために本屋にできることをもっと考えたい。

本全体としては、本屋についてというだけじゃなく、ビジネスについて考えを巡らせるのに良い本だったと思う。



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この本を読んで感じたことは主に2点。
1点目は、本屋を残すには、を考えるより本というメディアを残していくには、を考えるフェーズに移行しているのではないか、ということ。内沼晋太郎さんが『これからの本屋読本』を出版したのが4年前。私が普段主にしている仕事は個別指導塾の運営なので本屋ではないのだが、あの本を読んだ時と今日を比べた時に、確実に今日の方が、個人事業主として本屋で食べていくのは難しいんだろうなと感じる。小売りの肩身が狭くなっているという世の中全体の流れと、いずれ本という物質が地球環境的にぜいたく品になっていく可能性。無料動画メディアの台頭。これだけ動画メディアが身近になり、これからもその勢いは増すことはあるにせよ衰えることは考えにくい以上、非読者が読者になる可能性は低い。子どもたちを見ていても、アナログより断然デジタルの方が利便性が高い、と感じているように見える。書き手・作り手・売り手の三者の中で一番肝心な書き手が生き残っていくには、もしかしたら本屋がいない方が好都合かもしれない。キュレーションだけして、あとはオンラインで買ってもらえばいい。そうすれば本屋はテナント料も人件費もかからない。

本屋を生き延びさせる一番安易な方法としては、入場料制度。今、無料で本屋に出入りできることがたまたまラッキーなことなのかもしれない。美術館の一種として生き残る。あるいは、現状の本屋の良さを残すとしたら、本屋に有料で入る人と無料の人の差をつける。個人的に全国のあちこちに無くなってほしくない本屋さんが存在しているので、足を運んで本を買う以外に何かサポートできることがあったらいいのになとは常々思っている。有料にするだけの価値が本屋にはある。フリーライダーには図書館がある。

手段は本じゃなくてもいいのだが、それぞれが自分の頭で考えて自分の足で生きていけるようになるためには。いろいろなメディアがある中で本にしか担えないものを突き詰めていきたい。ふわっとした、豊かさと潤いを与える手段としての本、という価値訴求で考えると、本はなかなか遠回りな手段のものになってしまうのではないか。本というメディアを残すために本屋にできることをもっと考えたい。

本全体としては、本屋についてというだけじゃなく、ビジネスについて考えを巡らせるのに良い本だったと思う。

谷島屋 富士店 田雜麻紗子さん
韓国にも地域に根ざし、本と読者をつなげる場所をつくり、守ろうとしている人がこんなにも存在していることに親近感と共感の連続でした。
コロナ禍を経て、街の本屋の営み方にも変化が必要とされています。
日本国内だけでなく韓国にも共に模索する同士がいることを
心強く感じました。

らくだ舎 千葉智史さん | web
本屋は必ず「誰か」が運営している。本を買い求める人ももちろん「誰か」だ。とても当たり前のことだけれど、「本屋」「消費者」など少し大きな単位でくくってしまうと具体性がこぼれ落ちて、すっかりそのことを忘れてしまう。時々はっと自分で気づいて自分に驚く瞬間がある。

「韓国の本屋」という言葉の裏にいる、それぞれのストーリーをもち、強い思いがあり、現在の社会と向き合いながら奮闘を続ける多くの「誰か」に出合えること。これが何より本書の魅力だと思う。(たとえば、サンクスブックスのイ・ギソプさん、森の中の小さな書店ペク・チャンファ、キム・ビョンロク夫妻などなどたくさんの魅力ある人物と言葉が出てくる)

本がある空間を意思を持って維持する。
本を手にとり、自分のものとしてあるいは誰かへの贈り物として買い求め、楽しめる場所を存続させる
そんな思いで、とても小さな本屋を営む一人として、本書にとても勇気づけられた。



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本屋は必ず「誰か」が運営している。本を買い求める人ももちろん「誰か」だ。とても当たり前のことだけれど、「本屋」「消費者」など少し大きな単位でくくってしまうと具体性がこぼれ落ちて、すっかりそのことを忘れてしまう。時々はっと自分で気づいて自分に驚く瞬間がある。

「韓国の本屋」という言葉の裏にいる、それぞれのストーリーをもち、強い思いがあり、現在の社会と向き合いながら奮闘を続ける多くの「誰か」に出合えること。これが何より本書の魅力だと思う。(たとえば、サンクスブックスのイ・ギソプさん、森の中の小さな書店ペク・チャンファ、キム・ビョンロク夫妻などなどたくさんの魅力ある人物と言葉が出てくる)

本がある空間を意思を持って維持する。
本を手にとり、自分のものとしてあるいは誰かへの贈り物として買い求め、楽しめる場所を存続させる
そんな思いで、とても小さな本屋を営む一人として、本書にとても勇気づけられた。

ただ、まだうまく言えないのだけれど、「生き残る」という言葉はどういう状態をさすのだろうか?一面焼け野原になった状態では、生き残ったとしても意味はないような気もする。
オンラインとオフライン。ことさら、オフラインの書店の有用性をさけぶつもりもない。ただ、インターネットがすべてを解決するとも思えない。
ビジネスと文化。本書214頁に書かれていた「本は商品であり文化である」という言葉は、本当にその通りだと思う。だけど、本は良いものであると手放しに称賛するのも気が引ける。かといって単なるビジネスの商品であれば、取り扱う品は何も本である必要はない。
そして書店と書店。競争や対立ではなく、協働や調和といった文脈でお互いを認め合い、互いに手を取り合うことができるかどうか。
相反するように見えるふたつの事柄の間をとったり、資本主義を背景に競争や対立で語られてきた構造を変えていったり、どちらの側にもふれすぎずに、そうした具体的な「程度」を模索してくことがこれからの時代、もっともっと求められるのだろうという思いを、本書を読んで強くした。

勝手な、またおこがましい願いだけれど、本書を読むことでいまそれぞれの本屋が置かれている状況や思いを知ることができる。想像することができる。どこかに共感し、それぞれが住む場所や訪れる場所で、それぞれの本屋に足を運んでくれる人が一人でも増えてくれたら。本書にはそんな力があると思う。