第7回「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」授賞式に寄せられたメッセージをご紹介します

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【主催】一般社団法人K-BOOK振興会、株式会社クオン
【協力】ブックカフェCHEKCCORI

韓国の本に関する様々な情報を発信している一般社団法人K-BOOK振興会と、 韓国の優れた文学作品を紹介している株式会社クオンでは、優秀な新人翻訳家の発掘を目指して2017年から「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」を実施しています。
第7回のコンクールで総応募数155名の中から最優秀賞に選ばれた金子博昭さんは、本コンクールで初めて、課題作2作品ダブル受賞となりました。
11月23(土)、24日(日)に神保町で開催された「K-BOOKフェスティバル2024」では、金子さんほか、原作者や審査員も登壇し、授賞式が行われました。(概要はこちら

当日は時間の関係上すべては紹介できませんでしたが、原作者から激励とお祝いのメッセージをいただきましたので、こちらで全文ご紹介いたします。

全商国(チョン・サングク)さん(『우상의 눈물』/『偶像の涙』原作者)

『偶像の涙』の著者、全商国です。まずはこの作品を第7回「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」の課題作に選定し、また邦訳出版してくださったクオンをはじめとする関係者の方々に、心から感謝の言葉を申し上げます。

文学作品の翻訳は他の文章翻訳とは異なり、翻訳者によるまた違った創作物の誕生とも言えるのではないかと考えています。文学が純度の高い言語芸術であることに加え、翻訳は別の国の言語を自分の国の慣習と情緒に合わせて言い換えながら表現するものなので、作家・詩人としての、言語を扱う職人精神がなければ決して良い翻訳作品が生まれないからです。

そうした点で、今回の翻訳コンクールで最優秀賞を受賞された金子博昭さんの日本語版『偶像の涙』は原作を越えた、翻訳家によるもう一つの作品だと思います。

金子博昭さん、受賞おめでとうございます。翻訳に挑戦されて3回目の栄誉とのことで、より一層の感動があります。今回は私の個人的な事情で直接お会いすることはできませんでしたが、受賞が決まってすぐに「韓国文学と原作者の作品世界をより深く知りたい」と私の書斎にまで訪ねていらしたその情熱。金子博昭さんは翻訳コンクールの受賞とともに、作家という新たな挑戦の道へ踏み出すかもしれないという期待を抱きました。

また、第7回 翻訳コンクールの審査をしてくださった星野智幸さん、オ・ヨンアさん、古川綾子さん。韓国文学を広く伝えるために、本当に大事な仕事をしてくださいました。ありがとうございました。

最後に、今コンクールに参加されたたくさんの翻訳者の皆さんへ。あなたたちこそ、真の読者として韓国文学の広まりに大きく寄与してきた方々です。この期間、皆さんが見せてくださった韓国文学への愛、その地平をさらに開いていく情熱で、これからも挑戦してください。ファイティン!

ソン・ジヒョンさん(『여름에 우리가 먹는 것』/『夏にあたしたちが食べるもの』原作者)

アンニョンハセヨ。私は小説家のソン・ジヒョンです。はじめに、私の小説を翻訳してくださったすべての方々に感謝の気持ちをお伝えしたいです。たくさんの方が私の小説を読み、日本語に翻訳するため努力されていることを思うと、昨年は執筆の寂しさがやわらぎました。

特に、今回の翻訳コンクールで受賞した金子さんに心からお祝い申し上げます。別の言語で書かれた自分の小説が本になって手元に届くことは、これまで自分が本を出した経験とはまた違った感覚を与えてくれました。まるで私が書いた小説の完全な読者になったかのような感じ、と言ったらいいでしょうか。

文章ひとつ、単語ひとつごとに深い悩みと選択が必要な作業が翻訳だと思います。去年の今ごろ、私の小説に登場する“뜨개방(編み物店)”が、韓国ではどのようなイメージで浸透しているのかという質問を受けました。ただ編み物をする空間として命名するのではなく、その空間が持つ空気、色感、意味を、どんな単語にあてはめようかと工夫する姿は、暗い夜に真っ白な画面を眺めている私自身ととても似ているなと感じました。

その瞬間、翻訳は新たな小説を生み出す職業なのだということに気がつきました。そうして初めて、私の小説が自分を離れてとても遠くに、しかし無事に到着したという知らせを聞いたような気持ちになりました。そしてもっともっと遠くへ見送りたくなりました。いえ、この世のすべての小説がはるか遠くまで飛んでいったらいいなと思います。そんなふうに私のもとへ届いた小説を愛しながら生きていきたいです。

最後にいま一度、今コンクールに参加してくださった方々の情熱に感謝の気持ちと応援の言葉を贈ります。