<本文より>
思えば一昨年の第1回日本翻訳大賞受賞作二作のうち一作が韓国文学の『カステラ』(パク・ミンギュ著、ヒョン・ジェフン、斎藤真理子訳、クレイン)で話題となったが、それより前、クオンの「新しい韓国の文学」レーベルの第1巻、ハン・ガンの『菜食主義者』(きむふな訳)が出たあたりから、「韓国の小説、面白い!」という話題をよく耳にするようになった。実際これは面白かった。妻がある日突然肉を食べなくなってしまうところから始まる連作だ。理由を聞けば夢を見たといい、その内容は奇妙で毒々しい。痩せゆく妻になすすべのない夫、彼女に魅せられる姉の夫、そしてその姉の目を通して語られ、幻想的でありながらも生々しい痛みを感じさせる物語だった。
といった読みごたえのある作品たちを、その背景の歴史や文化を知らないなら新たに知っていきたいし、純粋に小説として楽しみたいなと、やっぱり思う。(終)