―ETV特集「オモニの島 わたしの故郷~映画監督・ヤン ヨンヒ」で紹介 4月末、待望の刊行―
家族を撮り続けることは 自分への問いかけ
ドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』『スープとイデオロギー』の
ヤン ヨンヒ監督による書き下ろしエッセイ
人々はヤン ヨンヒについて「自分の家族の話をいつまで煮詰めているのだ。まだ搾り取るつもりか」と後ろ指をさすかもしれません。 しかし私ならヤン ヨンヒにこう言います。「これからもさらに煮詰め、搾り取ってください」と。
ヤン ヨンヒは引き続き煮詰め搾り出し、私たちはこれからも噛み締めなければなりません。―映画監督 パク・チャヌク(『JSA』『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』『お嬢さん』)
「父の娘であること、兄たちの妹であること、女であること、在日コリアンであること、そのすべてから解放されたかった。家族にカメラを向けているのも、逃げずに向き合い、そして解放されたかったからである。(…)いくつもの手枷足枷でがんじがらめになっている自分が自由になるためには、自分にまとわりついているモノの正体を知る必要があった。知ってこそ、それらを脱ぎ捨てられるような気がしていた」(本書より)
家族を撮ること――それは自分のバックグラウンドと広く深く向かい合うことだった。
映画監督ヤン ヨンヒが、自らの家族にカメラを向けた<家族ドキュメンタリー映画3部作>のビハインドストーリーや、撮り続けるなかで感じる想いを、率直な語り口で綴ったエッセイ。
ヤン一家の話を通して、日本と朝鮮半島が歩んできた道、<家族>、そして<わたし>という存在を、見つめるきっかけになる一冊。
「日本と朝鮮半島の歴史と現状を全身に浴びながら生きてきた私の作品が、人々の中で語り合いが生まれる触媒になってほしい。そして私自身も触媒でありたい。生きている限り、伝え合うことを諦めたくないから」(本書より)
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著者プロフィール
ヤン ヨンヒ (著)
大阪出身のコリアン2世。
米国ニューヨークのニュースクール大学大学院メディア・スタディーズ修士号取得。高校教師、劇団活動、ラジオパーソナリティー等を経て、1995年より国内およびアジア各国を取材し報道番組やTVドキュメンタリーを制作。
父親を主人公に自身の家族を描いたドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』(2005)は、ベルリン国際映画祭・最優秀アジア映画賞、サンダンス映画祭・審査員特別賞ほか、各国の映画祭で多数受賞し、日本と韓国で劇場公開。
自身の姪の成長を描いた『愛しきソナ』(2009)は、ベルリン国際映画祭、Hot Docsカナディアン国際ドキュメンタリー映画祭ほか多くの招待を受け、日本と韓国で劇場公開。
脚本・監督を担当した初の劇映画『かぞくのくに』(2012)はベルリン国際映画祭・国際アートシアター連盟賞ほか海外映画祭で多数受賞。さらに、ブルーリボン賞作品賞、キネマ旬報日本映画ベスト・テン1位、読売文学賞戯曲・シナリオ賞等、国内でも多くの賞に輝いた。
かたくなに祖国を信じ続けてきた母親が心の奥底にしまっていた記憶と新たな家族の存在を描いた『スープとイデオロギー』(2021)では毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞、DMZドキュメンタリー映画祭ホワイトグース賞、ソウル独立映画祭(2021)実行委員会特別賞、「2022年の女性映画人賞」監督賞、KINOTAYO現代日本映画祭(2022)グランプリなどを受賞した。
2022年3月にはこれまでの創作活動が高く評価され、第1回韓国芸術映画館協会アワード大賞を受賞。
著書にノンフィクション『兄 かぞくのくに』(小学館、2012)、小説『朝鮮大学校物語』(KADOKAWA、2018)ほか。
本書のハングル版『카메라를 끄고 씁니다』は2022年に韓国のマウムサンチェクより刊行された。
Book Information
著者:ヤン ヨンヒ
刊行:2023年4月30日
ISBN:978-4-910214-49-8
ページ数:256ページ (オールカラー)
価格 2,000円+税
*本書は二〇二二年に韓国の出版社マウムサンチェクより刊行された『카메라를 끄고 씁니다』の日本語版です。著者が日本語で執筆したオリジナルの原稿をもとに、韓国語版を参照しながら編集をおこないました。