韓国金泉市のパン屋「ニューヨーク製菓店」の末っ子として生まれ育った、キム・ヨンスの自伝的小説。
お店を切り盛りする母、作家を目指す息子を見守る父、グローバル化の波が押し寄せる中で何度となく転機を迎えるニューヨーク製菓店……
この世から姿を消しても心の中を照らし続ける“灯り”に思いを馳せる、静かで温かな余韻の残る短編を、韓国語原文と邦訳を一冊にしてお届けします。
ー 訳者解説よりー
『ニューヨーク製菓店』は今から二十年前の作品だ。キム・ヨンス文学全体から見れば、初期の代表作だ。記憶の欠片を拾い集めながら個人の身体に刻まれた歴史をさり気なく表現することで韓国の近現代史にリアルに触れる手法や、〈私〉を生かしている他者あるいは死者の声に耳を傾けながら人間存在について探求する方法論など、『ニューヨーク製菓店』にはキム・ヨンス文学のエッセンスが凝縮されている。『ニューヨーク製菓店』は、キム・ヨンス文学の灯りだ。自分がどんな人間かを知りたければ、一時でも自身を点してくれたその灯りがいったい何によって作られたのか知らなくてはならないように、キム・ヨンス文学とは何かを知りたければ、『ニューヨーク製菓店』をじっくりと読み込めばいい。もっと言えば、文学とは何かを知りたければ、『ニューヨーク製菓店』を読めばいい。『ニューヨーク製菓店』は、文学とは何か、文学がなぜこの世に存在しなければならないのかを教えてくれる、文学の灯りだ。
キム・ヨンス作家ご自身による韓国語の朗読音声をYouTubeで配信しています。
CUON YouTubeチャンネル
刊行前にゲラを読んでくださった読者モニターの方々から、熱い感想が続々と!
◎この小説は、韓国の現代史を背景に成長し、今はこの世から消えてしまった「ニューヨーク製菓店」という作家の「灯り」を通じて、読者の「灯り」を召喚する物語でもある。
自分という存在は、自分が消え去ったあとも、もしかして誰かの「灯り」になれるのかも知れない、作家が与えてくれたそんな希望のためだろうか、読後感は、オレンジ色の街灯にように優しい。
――shirotoraさん
◎キム・ヨンスさんは過去を見つめながら、未来を語る。
――プレスさん
◎初めて読んだ作家の最初の一編に、こんなに入り込んで同化できるなんて。「感情移入」とか「共感」というのとはちょっと違う、いつの間にか自分のことのように追体験している気持ち。(…)著者の「誠実さ」と「潔さ」、それから「強さ」みたいなものが体温みたいにじわーっと伝わってくる作品です。ここから入ることができてよかった。
――寒天さん
◎あなたがもし今、暗闇の中で道に迷い途方に暮れていたら、この小説『ニューヨーク製菓店』をそっと手渡したい。暗闇をかすかに照らす道標(みちしるべ)として。
――yukiさん
皆さんの感想の一部を下の画面からご覧いただけます。
ー N E W S ー
2021.12.2
毎日新聞夕刊「アジア文学への招待」コーナーに、キム・ヨンス作家のインタビュー記事が掲載されました。
>> K-BOOKフェスティバル キム・ヨンスさんら対談 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
2021.12.3
K-BOOKフェスティバル 2021の公式プログラムとして11月21日に開催された「『キム・ヨンス作品を語る』翻訳者座談会」のイベントレポが公開されました。
>> https://k-bookfes.com/information/rep_youngsu-translator/
2021.12.10
12月21日に『ニューヨーク製菓店』を課題本にオンライン読書会を開きます。
>> クオン読書クラブ―第6回『ニューヨーク製菓店』 CHEKCCORI(チェッコリ)
2021.12.30
クオン読書クラブ『ニューヨーク製菓店』のイベントレポをクオンホームページに掲載しました。
>> 第6回クオン読書クラブ『ニューヨーク製菓店』(2021/12/21開催)
2021.12.31
K-BOOKフェスティバル 2021の公式プログラムとして11月21日に開催された「キム・ヨンス×星野智幸対談『小説家の仕事』」の様子をこちらからご覧いただけます。
>> イベントレポ:キム・ヨンス×星野智幸対談「小説家の仕事」|K-BOOKフェスティバル|note
2022.12.10
ためし読みページにて、2023年1月末までの期間限定で「訳者解説」全文公開しています。
>> ためし読みはこちらから
2023.3.6
「すばる」2023年4月号
辻山良雄さん(書店「Title」店主)の連載で紹介されました。
『ニューヨーク製菓店』をより深く楽しむ
ー関連書籍・ニュース記事のご紹介ー
「韓国新世代作家 キム・ヨンス講演会
―心の中にある記憶の“灯り”
韓国新世代作家がつむぐ個人の歴史、そして民族の歴史」
開高健記念アジア作家講演会シリーズとして2005年に日本5都市で開催された、キム・ヨンス作家の講演会(国際交流基金主催)。
この時にコーディネーターを担当した崔真碩さんが訳した『ニューヨーク製菓店』は、参加者の皆さんに事前資料として渡されました。
公演時のパンフレット、講演録、野中柊さんとの対談、ご当者によるレポートが、すべてWeb上で公開されています。
Webサイトを見る
『韓国文学を旅する60章』(明石書店、2020年)
第54章 キム・ヨンス、記憶を語る――「ニューヨーク製菓店」のあった町、金泉
総勢60人の作家/作品にゆかりのある土地について書かれた珠玉のエッセイ集。
この中で、翻訳家の橋本智保さんがキム・ヨンスさんの出身地「金泉」について書かれています。
書籍情報を見る
「慶北エッセイ スケッチブックーアン・ドヒョン、ソン・ソクジェ、キム・ヨンス」(安東MBC PLUS、2021年12月6日)*韓国語
安東文化放送によるプログラム。この中でキム・ヨンス作家は金泉駅前でニューヨーク製菓店の思い出などを語っている。
動画を観る
YesTV「できるかぎりやってみよう、作家キム・ヨンス:キム・ヨンス作家に会う」(Yes24、2003年8月5日)*韓国語
「ニューヨーク製菓店」を含む小説集『私がまだ子供だった頃』(未邦訳)を書くに至った経緯や、「ニューヨーク製菓店」を鉛筆で書いたことの効果などを語っている。
Webサイトを見る
著者:キム・ヨンス(金衍洙)
1970年、慶尚北道生まれ。成均館大学英文科卒。
1993年、「作家世界」で詩人としてデビュー。
翌年に長編小説「仮面を指差して歩く」を発表し高く評価されて以来、本格的に創作活動を始める。
「散歩する者たちの五つの楽しみ」で李箱文学賞を受賞したほか、東西文学賞、東仁文学賞、大山文学賞、黄順元文学賞など数々の文学賞を受賞。エッセイスト、翻訳者としても活動している。
邦訳に『世界の果て、彼女』『ワンダーボーイ』(以上クオン)、『皆に幸せな新年・ケイケイの名を呼んでみた』(トランスビュー)、『夜は歌う』、『ぼくは幽霊作家です』(以上新泉社)、『四月のミ、七月のソ』(駿河台出版社)、『目の眩んだ者たちの国家』(共著、新泉社)がある。
訳者:崔真碩
1973年ソウル生まれ、東京育ち。
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。学術博士。
現在、広島大学大学院人間社会科学研究科准教授。
テント芝居「野戦之月」の役者。
著書に『朝鮮人はあなたに呼びかけている』(彩流社)、『サラム ひと』(夜光社)など、訳書に『李箱作品集成』(作品社)、『ウォンミドンの人々』(新幹社)などがある。
【書誌情報】
著者:キム・ヨンス
翻訳:崔真碩
デザイン:鈴木千佳子
刊行:2021年12月24日
ページ:84ページ(訳者解説、韓国語原文ページ含む)
版型:B6変形判
978-4-910214-33-7 C0097
ご購入はブックハウスCHEKCCORIほか全国書店にて