『降りられない船-セウォル号沈没事故からみた韓国』著者来日記念

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ウ・ソックン×中沢けい トークイベント

日時:2014年10月29日  18:30~20:00
場所:三省堂書店 神保町本店 開催

 『降りられない船』の日本語版刊行を記念して著者のウ・ソックンさんをお招きした読者の集いが10月29日(水)19時から神保町三省堂書店で開かれました。
当日は、平日の夜の時間帯にもかかわらず、50人分用意されていた席がすぐに満杯になってしまい、慌てて追加の席をつくるほどの盛況でした。ちょっと高齢の方が多かったでしょうか。本を読む人が高齢化していますが、こういうところにも現れるのでしょう。

進行役の作家中沢けいさんがウさんに質問をしていくかたちで進行していきます。なぜセウォル号事件のような海難事故がおきたのか、なぜ救助が手こずって犠牲者を大勢だしてしまったのか。本の内容にしたがうかたちで話は展開していきます。

ちょうど、裁判中のセウォル号船長に死刑求刑が出た直後でもあり、そのことも話題になりました。ウさんの見解にしたがえば、事故は船会社の利益を守るために規制をどんどんゆるめて安全を放置した国や企業に根本的な原因があり、責任追及の本当の矛先をむけるべきはちがうところです。(当日ウさんが予想したとおり、光州の地裁判決では殺人罪の適用は認められず、懲役36年の判決がくだされました)。

中沢さんが、韓国は、日本を追い抜くほどの造船大国なのに、どうしてあのような事故が起きたのかという質問をむけると、韓国の造船受注はほとんど大型船であり、セウォル号クラスの船はないということでした。つまり今もこれからも中古の船が韓国沿岸の海運輸送の中心であることは変わらないということです。今回大事故がおきたことで戒めになって韓国沿岸の船が急に安全になるという楽観はできないということです。

この事件は船の安全という直接の問題ばかりでなく、韓国社会が抱えるほかの問題を浮きあがらせることになりました。大統領が事故当日7時間なにをしていたかわからないといって、産経新聞がコラムに書いたことをめぐって、産経のソウル支局長が大統領の名誉を毀損したといって起訴されました。当日こうした問題にも話が展開することを期待していましたが、時間切れ。 著者は次作に原発問題をとりあげるそうです。韓国と日本の原発にかんする調査が進行中だといっています。
次作もぜひクオンで日本語訳をといううれしい一言もありました。
韓国ではようやくセウォル号特別法も成立しました(11月7日)。事故を引き起こした本当の責任をあぶり出すことができるのか。本当の責任追及はこれからの作業でしょう。
この本の問いかけはまだ終わっていません。